散歩ついでに入院

 入院してきました。 初体験です。 




  • なんで私が病院に行ったか/どこが痛かったか

事の始まりは月曜日。 バス停で、陽気にバスを待っている私は自分の膝から下が骸骨ロック並みに震えている事に気がついた。 「なんじゃこりゃ!」と思いつつも、震えは止まらない。 座ると止まる。 立つと震える。 一時間ぐらいたったら、やんでいたので、「無かった事にしよう」と決心し、ころっと忘れました。


次の日、火曜日。 朝方「なんだか足が異常に痛いぞ」と思いながらも眠っておりました。(私は考えながら寝る事が出来ます) で、はっきりと目が覚めた時に「痛いじゃねえか!」と結構びっくり。 足のシシャモの部分、名前なんていうんだろう、もも? すね? すねって、膝の下の体の表の部分だよね、そこの裏の筋肉。 そこが両足とも痛くていたくてたまらないのです。 レベルはフルマラソン後の筋肉痛。 おっかしーなあ、と思いながらも、大学の友達と遊びに行き、夜は高校の時の友達の家にご飯を食べにいき、結構普通に生活してみました。 


寝たらなおっていたという設定が一番良いぞ、頑張れ私の筋肉と、無理な期待を込めながら睡眠をとり、目覚める事水曜日。 しかし、まだまだ十分痛い。 「これはGPに行った方が良いのかしら」と一応、バスに乗り、痛みをこらえながらとことこ歩き、通院。 こっちの病院のシステムは日本と違う。 General Practitionerと呼ばれる、何でも見てくれる街のお医者さんたちの集合所みたいな場所に行って、そこの先生が専門医に行くべきか否かを判断する。 そして特別なケアが必要だと思ったときに、Hospital紹介状がかかれて、行く事になる。 そういう妙なシステムなんです。 だから今まで一回もHospitalに行ったことが無い子も結構ごろごろいる。 江戸時代の檀家制度みたいな感じで、新しい街に引っ越しする度に、新しいGPに自分を登録し、自分の担当医になってもらうようだ。 私は結構健康体なので、今まで住んできたどの地域でも、GPに一回以上行ったことが無いからその担当医感は味わった事が無いんだけど。 なおかつ奇妙な事に、GPには予約をいれておかないといけない。私はそれをいつも忘れて、言ったは良いけど結局二日後の予約をとりつけただけとかって事になる。 こっちの人は自分がいつ病気になるかが分かるという凄い能力をお持ちのようだ。 私には二日後の健康なんて分からない。 分かってたら、病気にはならない気もする…。 ここらへんのシステムが良くわからない。 GPの集合所に、先生達が数人いて、一人にかかる診察時間は十分ぐらいで、どうして二日後まで予約がぱんぱんになるのかもわからない。 だって、結構多くの小さな集落にも数人はGPがいるんだよ?! みんなそんなに体調不良なのか? 今回も飛び込んだはいいけれども、予約は二日後までぱんぱんと言われて、「いや、今見てもらわないと困る!」とだだをこね、四時間後の看護婦に見てもらう権を手に入れた。 そして、図書館でヴァレンティアフェアとかヴォーグとかを読みながら、ちょっと気分よく、四時間過ごし、またGPの元へ。 看護婦は私の足を触った途端にその冷たさに異常を感じ、先生を引っ張ってきてくれた。 だだこねてよかったと思いつつ、先生に診察してもらうと、こんな症状はおかしい! これは神経がやられているわ! なおかつ、あなたの足には脈がないと慌てふためき、今から救急車呼ぶから、Hospital行きよと宣言された。  そして笑える事に、救急車よりタクシーの方は早いから、救急車案はドロップされて、タクシーにのって、病院に行く事になった。 タクシー、無敵な交通機関なんだね。 



病院の緊急外来に行って、また待つ事数時間。 こっちでも先生達が「この人、足に脈が無い!」とびっくりする。 結局四人の先生が私の脈を探しにきた。 なおかつ血液検査の為に腕から血をとろうとしても、上手くとれなくて、四人先生が変わって、六回さされた。 最初は私の友達のクラスメイトである医学部四年生の子で、次は六年生、次はインターン生と、どんどんけつ血液採取者の年がとっていき、最終的にはおばあちゃんっぽい看護婦さんが意地をみせてくれた。 やっぱ経験なんだなあ。 私の血管は、少しの衝撃でも奥に引っ込んじゃう変なので、見えている血管でも、針を体に刺すとその瞬間に見えなくなっちゃったりとか、そういう「逃げ」の姿勢が非常に強い凄いのなんですよ。 日本でもすんなりと血をとってもらったことはなく、大抵凄いところからとる事になる。 今回は左手の親指の付け根から抜かれた。 痛かった。 注射器じゃなくて、プラスティックチューブを血管に入れて、「いつでも血が出せる、マルチ水道」みたいなのを作り、そこからとりたい時にいつでもとるみたいな状況を彼らは作りたかったんだけど、腕にその水道の蛇口みたいなのを指しても、血は出てこない。 腕にチューブがささっていているのに、血が出てこない状況って見ていて、シュールだよ。 人間じゃないみたいな気分になる。 とにかく、とんでもなく痛い思いをして血をとられて、なおかつ足りなかったと追加にまでこられて、既にその時は十二時を過ぎていた。 緊急治療室のエリアにいたから、周りが凄い! なんか泣きわめいている人ばっかりで、私は非常な地味な病状だからほっとかれる。 ちょっと孤独かもと思い始めた時に、「血液検査の結果が微妙だから、明日足のスキャンするから、今日はおとまりね」と宣言されて、なんだか悲しくなってしまい、涙が出た。 で、日本に電話して「足が痛いから入院」と明らかに親を混乱させる発言をし、(なおかつ泣きながら。ご両親パニック。)次に高校の時の友達の家に電話し「寂しいし、今日一回もご飯食べてないし、怖いし、死んじゃうかもしれないし、惨めだし、孤独だ!」とおいおい泣いて同情を引く。 そして、夜中の一時過ぎに緊急病棟にご飯をもってこさせた。(夜中だからヘルシーな物じゃなきゃ食べないと宣言していたので、ホーマスたっぷりのサンドイッチだったよ。) そしてやっと普通の入院患者の病棟にうつって、そこの家族室で、私と友達とで、お菓子とか食べながら朝の四時ぐらいまでだらだら過ごす。 「起きた時にそばにいてほしいから、昼過ぎまでには戻ってきてね」という私の「?!」っていうレベルの我侭にもつきあってくれて、私が起きるより前に病院に戻ってきてくれた友人に感謝。 そして超音波検査とかにもつきあってもらって、今日は寂しくなかった。 で、なんか結局今日も五時過ぎまで病院にいたんだけど、原因分からないから、帰って良いよって事でかえってきたんです。 昨日の夜はいかにも血液検査がおかしいみたいな雰囲気だったのに、今日は「全ての検査結果がノーマル」と堂々と言われた。 まるで「俺たちはおかしくない、おかしいのはお前の足だけだ」って態度だ。 その通りだ。 だからここにいるんだ、ごらぁと暴れたくなる。 

なにかがおかしいぞぉ!! 

「病状とは多分関係ないけど、君は足に脈がないし、腕の血管もなんかおかしいし、両足しびれきっていて、歩きにくいみたいだけど、でもそれ意外は普通だから。 そこが痛いべきである理由もないし、そろそろ痛いのやめたら?」って事なんだろう。 そういわれると、私の足が痛い事の方が、おかしい気がしてきて、「痛いはずがないから、元気出せ自分」って流れになるよ。 薬局で買える普通の痛み止めを処方していただき、帰宅です。 うーん…。 痛み止めを手に入れる為に24時間以上ついやしてしまった…。 何がおこってるんだ、私の足に…。 でもって、私はニュージーランド原住民じゃなくて、うるわしの日本からの放浪者だから、とんでもない値段を請求されるはずだった。 昨日入院する前に金額を聞いた時は目ん玉が$の形になって、「チーンッ」って音とともに飛び出した。 だから戦々恐々となっていたんだけど、帰りはどさくさ(?)で一円も請求されなかった。 どういう事なんでしょうか…。 


それにしても病院はちょっと楽しかった。 夜中は緊急病棟の雰囲気に流されて、ちょっとめそめそ泣いてしまったが、(あと、単純に腕が痛かった! 六個血液用の蛇口作られたんだよ!! しかもその日は水一杯しかのんでいなかったし)機能としての病院は学び甲斐がありました。 ホスピタリティーとかケアとかの殿堂だから、「思いやり」とかを考えるには最も適した場所かも知れません。


  • 入院中に読んだ本

面白かった! 病院で読んだから、なんかすっごいよかった! 病院は、あるものあるもの全てがインダストリアルデザインの領域なので、非常にためになります。 スッゲー興味深かった。

行動主義―レム・コールハースドキュメント

行動主義―レム・コールハースドキュメント

デザインの輪郭

デザインの輪郭

苔のむすまで

苔のむすまで



とりあえず、日本の友達は今回私がこっちで病気してよかったと思っていると思います。 じゃないと、「目が覚めた時に横にバナナ持っていてほしいの」ってのをやらなきゃいけなかったりするものね。






これが入院先の朝食。 入院患者全員分のトーストは一体どのように焼くのでしょうか? 
どでかいオーブンとかでばーんっと一気に焼くのかな。 じゃないと大変だよね?




迷子札。 あと水道の跡地三カ所。 見つけられますかね?
消毒液が真っ黄色で、血管が真っ青で、水道跡地がクリムソンで、なんだか奇麗だと思った。