木曜日の夜四時間遅刻して友達の待っているPinkcowに行く。 完璧に出来上がっていて私を軽蔑の目で見つめる群れを見て逃げ出したくなる。 見事にその日にそこにいた人たちは私の最近かかっている時間の流れに乗れない病に被害を被った人たちばかりだった。 私としては四時間遅れても着いた事をほめてほしいんだけど、もちろん彼らはただ私を軽蔑するだけ…。 なんでこんなに感覚が鈍くなっちゃったんだろう…。大学で一番好きな教授がやめる事を知り、失恋にも似た気分になっていた私の目の前にその心の隙間をうめる巨大で豪華な人が現れる。 なんてこった。 失恋に包まれた気持ちは4時間で終わり、期待と自分の限界と妄想に包まれる事になった。 私は失恋のような喪失感により四時間遅刻したが、速攻でそこを埋める人を見つけたのだ。 世の中お手軽だ。 私のシステムってよくできてると感動する。 
幸せで愛に包まれた愉快な時間を友達と過ごして、気がついたら終電を逃していた。 気がついたらっていうか、気をつける気が最初からなかった。 で、友達の家に泊めてもらう。 金曜日の朝一でレポートを出さないと、留年してしまう事になっていたので、かなり緊張感が走る。 友人達は私が酔っぱらっている様子を見て留年するつもりなんだなと勝手に決めていたらしいんだけど、以外と簡単に金曜日学校に行けた。 理由は部屋が寒くて目が覚めたから。 そうか。 暖かさに体を甘やかしているのが理由の一つなのね。 
金曜日は、昼過ぎから社交に徹する。 アレックスと学校中を練り歩き、友達に会っていく。 おかげで午後に提出しなくてはいけなかった課題の事を完璧に忘れてしまった。 そこら辺から自己嫌悪と自信喪失に苦しみ始める。 自分への自身を徹底的に無くし、パラシュートなしでヘリから飛び降りているような気分になる。 地上に着くのも怖いし、空にいるのも怖いし、雲はびゅんびゅん私を通過していく。 どうしようもない牛乳を吹いた後のぞうきんみたいな気分に浸る。 寒さが身に凍みるし、言語がよくわからなくなってくるし、脳みそが緑色になってとんでもない方向にレーザーを放っているような幻覚に取り憑かれる。 途方も無く孤独で誰とも共有している言葉のない気分になり自分でも自分がpatheticだと分かり、軽蔑し、もっと自信をなくす。 
土曜日、目が覚めても絶望的な気分は続く。 ついこの間感動した自分のシステムは修復不可能なほどに根底がない化け物たちによって操作されている怪談のようなものとしか思えなくなる。 私の頭の中にうごめく悪魔と妖怪と、化け物と、ゾンビたちがスリラーばりに踊り狂っているのが幻覚で見えた。 恐怖に包まれてもはや寝床から這い上がる事は不可能に思えたが、土曜日の待ち合わせだけは遅れられない。 ここで遅れたら私はもっとうなされるはめになると、気合いをいれて十分遅れで待ち合わせに向かう。 駅で友達にあったとたんに、がらっと気分が代わり、私の心のプールの周りにはジャングルが出来上がり、水で満たされた。 プールの底からは暖かい光すらがでていた。 聞こえて来るのはシタールの音色かしら。 いや、なぜかBeatlesだ。 ついさっきまで化け物達のステージであった、心のプールサイドが、高品質のリゾートに変わるから、自分って不思議だ。 ネガティブな時はその変化ばかりの自分をpatheticで自信の足りない愚か者だとこけおろして化け物たちのステージに身を投げるから、この不思議な感覚が大きな助けを私の心に与えているかというとそうでもないんだけど、そんな事はどうでもよく、自分の心の変化にポジティブな時は感動しきる。
友達との関係は誰もがうらやむであろう親密さと、輝きに包まれた少女たちの心の動きと、東京の神様に愛されているとしか思えない数々の奇跡がスパイラル状になっている、生命讃歌のような感じで、私の心のプールサイドにはついにユニコーンが水を飲みに来た。 人類の歴史の一ページに是非、私たちの土曜日を記録してもらいたい。 そしてどんな事があっても、私の日々に、この土曜日があったことを忘れたくない。 私たちは日本橋を散歩して、雨の表参道で買い物をして、もしこれがアンティークであったら間違えなく博物館級のピアスを早い誕生日プレゼントで貰い、pinkcowでおいしい飲み物を飲みながら、いっぱい会話をしたのだ。 プールサイドはついに空中庭園までがくっつき合った楽園へと進化したのだ。 私はここ数日間の心境を友達に話し、分析してもらい私にあったアドバイスをもらった。 それはとても的確で建設的で私が聞きたかった言葉だった。 無意味にぐちゃぐちゃのメモであふれかえった箱を整理しなおすのを手伝ってくれる友達は何者にも代え難い。 私は痛みに弱いし、あんまり修行とかに向いているタイプじゃないんだ。 夜のとばりとともにプールサイドには満天の星空が広がり、場所を見つけてのびのびし始めた感情たちが踊り始めた。
すっきりとした頭と、立ち直ったセルフイメージと、満たされた心で今日は友達と橋本でお茶を飲んだ。 やった! 今日は五分遅刻したけど、相手が十五分遅刻したから、大丈夫! このままだったら次は待ち合わせの時間にぴったりに着く筈。
結構長く友達なのに作品を見た事がなかった陶芸家の子と会う。 彼女の作品を初めて見たのは金曜日なんだけど、わたしが意識していない事を強く意識し、ものすごく豊満で匂いたつようなつややかで切なくて、美しいものを作っているんだと知った。 で、彼女の手伝いをする事を快諾した。 友達の才能を知り、自分の人生に喜びが増えた事と新しいストロベリーフィールドの誕生に感動する事と、嫉妬と焦りと絶望に包まれる時の違いはなんなんだろうか。 どうしてコントロールできないんだろうか。 まだ分からないけど、扱いにくい荒々しい感情があるから、喜びが引き立つのならもうそれでもいいやと思えるようにはなりたい。 友達のプレゼン用の準備を手伝った後、すごく良い会話をした。 刺激と新しい発見に満ちたものであったし、落ち着いた時間の流れを楽しむ優雅なものであったのも事実。 なんて素敵な女性なんだ。 かわいい女の子は多いけど、素敵な女性は少ない。 「お姉さん!」と叫びながら彼女に抱きつきたくなっちゃったよ。 大人になるのは怖くないと思わせてくれる人だ。 潤っていて、スパイシーな匂いがする。 私は彼女の夫もすごく好きだから彼らへのあこがれは募るばかり。 

ああこれで今が試験週間でなかったらさっさと風呂に入って寝れるのにな。 まだまだやらなきゃ行けない事でいっぱいだ。