昼寝
友人たちと飲茶を食べにいって、至福な時を過ごす。
昼にまともなものを食べたのって、一ヶ月ぶりぐらいだ。
よって途方もなく胃が痛む。 限りなく不健康だ。
アレックスと久しぶりに電話で話して、元気を貰う。
毛布にくるまれ、寝たり起きたりを繰り返しながら作業をする。 ひたすら切ったり貼ったり。 描いたり塗ったり。 たまに寝たり。 DVDを鑑賞しながら、こんこんと作業作業作業。
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私がとろとろしている時にThe cook, The thief, His wife and her loverが流れて、ものすごく幸せで充実した気分になりながらまどろんだ。 話の内容と真逆の事が起こり、理解不能。 しかしながら素晴らしかった。 凄かった。 全ての映像に、シーンに、「うわっ、この感じ知ってる! 昔どっかで見た」となる、この感覚の深くに潜む肌触りを再現するその完成度に脱帽です。 うとうとしている私が「あー、凄い、これ好き、凄い凄い、むにゃむにゃ」と感動と眠気の重なり合いの凄い繊細な時間を過ごしているのにも関わらず、同じソファーに座っていた人が「良いからもう寝ろ」と冷たくあしらう。 ひどい! 「そんな事をいう君が泥棒だ!」とごにゃごにゃ言いながらまどろむ。 物語のアレゴリーを自立させ、なおかつそれとためをはるぐらいの映像の質を同時に持ち出すって、凄い事ですよ。 力技だし、繊細だし、途方もなく凄くないか? 大抵どっちかが良かったらどっちかはその良かった方と比較しちゃうから、かすんで見えやしないか? 最近友人たちと「まずは簡潔な物語を作り、それと積極的に共存できる形を生成しよう」と課題のブレインストーミングをしている時に話していたんだけど、まさにそれだった。
今日はものすごい至福感。 たいした事はしていないのに、大きな気分を味わうこの日曜日の昼下がり。 途中胃が痛くて涙を流したが、結果として大変に良い一日だった。
それにしても映画を見ているとむなしくなる。 「ああ、私は他にする事がない人間なんだ」と思ってしまうからだ。 映画からの喜びが多ければ多いほどに、「ああ、素晴らしい時間を過ごしてしまった。 映画の力にたより自分でこの時間をこれほどまでに素晴らしい事にできなかったなんて、私はなんてへぼぴんなんだ」としょげる。最近暇さえあれば(というか生きようによっては始終暇だ。 忙しさが自分のやる気に比重するのが学生の特性だろう)映画を見ている自分に「田舎で映画を見ているなんて、私の人生じゃない…」と落ち込む。
私の友人は私以外みんな限りなく映画が好きな人達で、様々な局面で「ああ、友達が映画が好きで良かった」と思える事があった。 今すぐに何が良かったのか思い出せと言われたら、「課題をしている時に、それに関連した良い映画をすぐに紹介してくれて勉強になる」とぐらいしか例がでないんだけどさ。 だから心のどこかで、「なんで映画なんて見るの!」と思いながらも、「映画もそんなに悪くはないよね」と控えめに発言できるようにはなった。
私は結構本を読むけど、それを同居人は「なんでそんなに読むのかね」とげっそりして聞いてくる。 多分相手からしたら「本を読むなんて他にする事がない人間のすること」なんだろう。 たとえ私が本を読むってのは、行為そのものが目的になっている立派な営みだと宣言しても、私が映画に対して同じような偏見を持っているので相手の良い分もえらくよくわかる。 多分、小さい時に誰かに遊んでもらいたかったのに、「今本よんでるから駄目ー」とか言われて、「なんじゃそりゃ!!!」とむかっ腹をたてた事があるんでしょう。
雑誌もそうだ。 知人が「雑誌を読むために時間を作るっておかしいよね。 時間があいた時に読むためのものが雑誌なんだ」と言った時、唯一の趣味が雑誌を読む事の私は机をひっくり返して、インスタントレスリング場にし、その上で奴と決闘しようかと思ったけど、我慢の子をした。
映画は、好きになっちゃったら私の性格上、一歩も家から出なくなって、出たとしても真夜中の映画館ぐらいになっちゃうような気がする。 映画を好きになるって危険な事な気がする。 だから当分は「映画? 悪くないけど、映画見る時間があるなら街に出るね」と言っていようと思う。 そして心の片隅で、監督や俳優、映画好きの友人たちの事を「すごいなー」と思っていようと思います。