車にあたった

さー、家に帰ったら課題やるぞと思いながら12時過ぎに帰宅。 
そうしたら同居人たちが呑みながら盛り上がっている。 
さささ、どうぞどうぞとシャンパンの入ったグラスを渡され、カンカンと呑んでいるうちに私まで盛り上がり、じゃあ、夜遊びに行こうと、お化粧し直して着替えて遊びにいく。 一時をすぎていて、町は酔っぱらいであふれている。 クラブのテラスから道路を見下ろすと、なんだかよっぱらいが細菌のようにむにゃむにゃむにゃと動いていて、そこを血流の流れのように車が通りなんだか面白かった。
遊んでいる最中にも呑みまくり、だんだんふらふらしてきたので一人で先に帰ることにする。 
あれれ、世界が回っているよと思いながら、道を渡ろうとしたら、車にあたった。 
車は走っていた、私は歩いていた。 多分、ひかれたとも言えるんだろう。 でも車は焼き芋屋さんぐらいのスピードだったんだと思う。 私は一瞬ぐにゃっとして、体が妙な方向にしなり、痛かったけど、普通に歩ける程度の痛みで、痛いというよりもしびれた感じだった。 軟体動物に一度なり、それからまた骨ができたから痛いみたいな、なんか変な痛みが体にあふれていた。 車にあたったことよりも、体がそれに順応しまがり、それを戻すことの方が痛い感じだった。
同居人が、ものすごい顔で「だいじょうぶかー!」と叫んでいて、その光景がやけにゆっくり見えたんだけど、ストレスのせいで世界がスローモーションに見えるとかそういうのじゃなくて、やつも十分に酔っぱらっていたから、本当に行動がどろんとしていたんだろう。 ひかれながら、そんなことを一瞬で考えた。 
「あいたたたた」と右半身に鈍い痛みを感じながら、タクシーに乗り込み、(町の繁華街から家までは歩いて十分ぐらいなんだけど、車にひかれるぐらいに酔っぱらっていたから、さすがにタクシーに乗った)運転手さんと「いやー、お客さん、今日はどんなかんじでやんしたか?」「いえいえ、旦那、たいしたことはなかったですよ。 うっしっし。 ちょいと車にひかれましたがね。」みたいなちゃらちゃらとした社交辞令を言い合う。 タクシーの運転手が「そんなまさか。 ご冗談を。 うっしっし」みたいな事を言うから、ああ、じゃあ、私の車にあたったのは妄想だったのねと勝手に思い直す。 「ああ、きっと木やら電柱やら人にあたったのを、車にひかれたとおもったんでしょね、うっしっし、わっしちょっと酔っぱらっているもんで。」とかなんとか言っていたら家に着いた。
朝起きて、なんか右手首がゆるい感じがするな、間接がちょっといつもと違うと思いながらも普通にトーストを焼いて「ちょっと二日酔い? いやーね」とか考えていた。 
同居人に「昨日すごい酔っぱらってて、自分が車にひかれた妄想が頭から離れなかったんだよー」とへらへら言ったら、「あんた、本当にひかれてたよ」と言われ驚いた。 おお、あれは本当だったのかと。 そうしたら怖くなった。 あああ、冗談にならないよ。