きりきり舞い

午前の部

 DVDは延滞しているし、課題の提出は火曜日に迫っているし、今からバネのように立ち上がって誰の目にも留まらないぐらいのスピードで全ての物事をこなしていかなきゃいけない。 今回私はうっすらとついていない。 ここで「ついていないんだー」と叫んだら、もっと不運が舞い込みそうなので「うっすらと」の部分を強調しておきたいんだけど、学校のスキャナーや、カラーコピー機が壊れたりと、ただでさえ少ないハイテクがどんどんと目の前で使えなくなっていく! うっすらとついてない!

 昨日図書館のスキャナーが動かなくなり(多分私が壊した)、結構本気でやる気が失せた。 「もういいんだよ、あー、もう、あー、なんだか、あー、もう遊びに行こう」となるにはもってこいのシチュエーションで大切なものをスキャンしている時に動かなくなった。 そしてギラギラした気持ちのまま友人と合流して、呑みに出かけた。 「なんで今スキャナーが壊れるんだよ」と深く落ち込みながら。 こういう課題提出期間ぐらいの時って、みんなが学校のファシリティーを使うから、一番壊れ時なんだよね…。 くぅ…。
 
 「こんなにストレスがたまっている時ならば、なんか面白い事がおこるかも」とストレスを悪者じゃないと思っている私は、ビリヤードに挑んだ。 いつもはあまりうまくないこのゲームも、このイライラとともにやったらうまくいく気がしたのだ。 そうしたら案の定うまくいった。 ガンガン玉を穴に落とした。 一人で圧勝して来ました。 「この穴に落とす。 私はできる」と思って打つと気持ちよく玉が落ちるのよね。 前から自分がビリヤードが下手だって事が腑に落ちなかったんだ。 こんなにビリヤードうまそうな雰囲気がこの身からあふれているのにと!  ああ、棒と玉と穴とアグレッシブさの融合が大切なのね、なるほどなるほどと、ガルルルル、と一人で獣づく。 ポケットの中の野生。 玉は穴に落とす!

 私が酔っぱらいながらビリヤードをして、かなり一人の世界に入っている時(対戦相手がいろいろと社交的な話しをしてきたけど、完璧に無視した。)私の他の友人たちはよっぱらいながら真剣にBoggleをしていた。 Boggleは単語ゲームでおおざっぱなルールを言うと、盤の上にあるアルファベットから三分間の内にどれだけ単語を見つけられるかを競うゲームだ。 私は参加しても負けるから(参加者のうちの三人は英文学を学んでいる生粋のおたくだ。 この単語はシェークスピアが使っていたから単語として認めるだの、最後に使われたのがいついつで古すぎるから認めないだのを話すだけで、大量のアドレナリンが出まくるタイプの人間。)机に顔をのせて真剣な友達の顔を見ていた。 「手元さえ見なければ今表情は凄くセクシーだよ」と暇つぶしに言ったら、「知性とはセクシーなものなのだ」と言われた。 パブでBoggleやってる人間が知的なのかは分からないけど、自分の好きな事を真剣にやるってのは顔面に良い影響を出すのかもしれない。 そして日々文字をペンで書きなれている人のペンの持ち方や腕の動かし方にも機能美を感じる。 人が何か書いている姿は魔法のようだ。 そう、なんでだか分からないけど昨日私はださい単語ゲームをパブでやっている私の友人たちに途方もなくときめいてしまったんだ。 銀河系からの鈴の音が聞こえたね。 あと雪の上を歩くようなッザク、ッザクとした足の裏の感覚も。 ときめきとちらつきは似ている。 

 気がついたら少し春めいてきた。 こっちの梅はちょっと南国テイストが入っている気がする。 でももしかしたら梅じゃないかもしれない。 春めいてきたどころか、今日はあつい。 やっほーい! 一年に一回あるかないかのいい天気の日だ! そして、そんな日に私は作業作業。


日本の友人がストレスフルな状況にいるみたいだ。 彼女は日本の大学が一緒でなおかつ実家も近くて、湘南呑みの時の相棒で(彼女がペコで私がスマイル)、行動力の凄くある魅力的な人だ。 私の行動力は落ち着きのなさと関係があるけど、彼女の行動力は若さと関係していると私は思う。 私が黒なら、お前は白と私は勝手に振り分けている。 いつも元気だなと尊敬している逸材です。 本人は自分史の一ページを華々しく飾るほどの内乱を今現在行っているのだろうし、それについては深く同情しているとしか言えないんだけど、彼女を尊敬している分、きっと次に会う時彼女はもっと魅力的になっているんだろうなと思える。 近くにいたら、少しは何か貢献できるかもしれないんだけど、こう離れているとメールとかでしか疎通はできなくてなんかやっぱりちょっとね。 こっちが一人でおろおろしちゃうよね。 だから言える事は、次ぎ合う事をとても楽しみにしているってことだ。 楽しみだな。 どんな形の結果になっていても、彼女なら魅力的になっているんだろうと思う。 


そういえばなくしていた家の鍵が電子レンジの上から出てきた。 家の電子レンジは冷蔵庫の上においてあり、絶対高さは二メートル以上で、私はそこに物を置いた事はない! 何故?! そしてipotが壊れた! うっすらとついてない…。

午後の部

夕方になってもきりきり舞いはエンドレスに続く。 図書館でサイトンブリの本を探そうとして、かれの名前の綴りが分からないことに気がついた。 たしかすごくかわった書き方をするんだと、思い出そうとするも、とりあえずカタカナでグーグルしたら早いだろうと思い検索。 しかし見つからない。 あー、絵画が一回だか二回ゾンビでスリラーみたいな題名の本が彼関係だと必死で思い出そうとするもそれも失敗。 アマゾンでランダムに音から推理して探した。 Cy Twombly。 変な名前だ。 そしてカタカナだとサイ・トゥオンブリと表記することが分かった。 トォンブリってなんだか牛の寝起きの音みたいな名字だな。 大学の先生にトォンブリは好き?と聞かれたときに、私の友人が彼の作品を愛しているから私はちょっかいだせないんだと答えて笑われたことがある。 年上の友達が多いと、主な作家が既に情熱とともにブッキングされているからちょっと大変よね。 もし私のラウシェンバーグ熱と友達のトォンブリ熱が入れ替わったら、立場的にもちょっと面白いのに。